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THE OHIRA LAB
武庫川女子大学
食物栄養学科
脳情報栄養学研究室
研究内容
脳は、様々な環境要因によってダイナミックに変化することがきでます。このような脳の能力を、脳可塑性(または神経可塑性)と呼んでいます。約半世紀前、脳可塑性のひとつの原理として、神経細胞間のつなぎ目であるシナプスにおける神経活動の伝達効率の変化が想定され、その後それを証明するような発見が数多く報告されてきました。さらに、最近の研究によって、脳にはもっと劇的な変化が生じていることが明らかにされてきています。例えば、大人の脳の特定の領域で新しく神経細胞が盛んに作られていること(この現象は成体神経新生といいます)、一度分化した神経細胞の成熟度が変化していること、グリア細胞によって神経活動が制御されていることなどが見出されています。
私たちの研究室では、世界に先駆けて、成熟した哺乳類の大脳新皮質に抑制性神経細胞を産生することのできる神経前駆細胞 [L1-INP cell (リンプ細胞)と命名] を発見しました。脳機能は興奮性神経細胞と抑制性神経細胞のバランスで決まります。興奮抑制バランスの欠如は、自閉症、うつ病、統合失調症、睡眠障害、摂食障害などの精神•神経疾患に深く関係しています。そこで、リンプ細胞の増殖•分化をはじめとする脳可塑性を制御する細胞内外のメカニズムや大脳皮質の新しく産生された神経細胞の生理的機能を明らかにし、精神•神経疾患の予防•治療法に結びつけることを研究室の大きな目標としています。
近年、iPS細胞やES細胞の確立により、再生医療の研究が盛んになり、その応用についても現実になりつつあります。つまり、世界は、細胞から臓器を再生し、それを体に移植することができるようになってきた段階にあります。一方、せっかく作った臓器を長期間保存する技術はほとんど無きに等しい状況です。細胞の保存は、すでに完成の域に達していますが、臓器や組織を保存し、さらに蘇生させることは困難です。そこで、私たちは、脳をモデルとして、全脳の凍結保存•蘇生法の開発に向けた研究をおこなっています。現在開発中の技術は、元々食品の冷凍保存技術に用いられてきた方法を、動物組織において応用しているものです。この方法が確立できれば、年単位の長期保存が可能になるとともに、事故など不慮の事故による急性の臓器移植にも対応できることとなります。また、ゆくゆくは常温での長期保存法にも挑戦していきます。
主な研究テーマ
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リンプ細胞をはじめとする神経可塑性の分子細胞メカニズムと生理的機能の解明
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脳可塑性を制御することのできる栄養素を含む物質のスクリーニングと神経精神疾患に対する食事療法への応用
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全脳保存法の開発
L1-INP細胞から産生された抑制性神経細胞