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2019.8.9

成熟した霊長類の大脳皮質にもL1-INP細胞が存在する

 これまでの研究により、私たちは、成熟した大脳皮質で新しい抑制性神経細胞を産生することのできるL1-INP(リンプ)細胞の存在を明らかにしてきました(Ohira et al., Nat Neurosci, 2010; Ohira et al., Neuropsychopharmacol, 2013; Okada and Ohira BBRC, 2017)。しかし、これらの研究は、マウスやラットなどのげっ歯類を用いたものでした。

 

 今回の研究において、私たちは霊長類の一種であるコモンマーモセットを用いて、成熟した大脳皮質にL1-INP細胞が存在するのかどうか組織解剖学的な手法により確かめました。その結果、コモンマーモセットの大脳皮質にもリンプ細胞が存在することを発見しました。さらに、マーモセットに抗うつ薬を投与すると、大脳皮質で新しい抑制性神経細胞が増加することも見出しました(図)。したがって、一部の増殖した抑制性神経細胞はリンプ細胞由来である可能性があります。

 また、この実験では、抗うつ薬による他の脳組織や細胞への影響についても調べています。これまでげっ歯類などで調べられてきた、抗うつ薬による海馬神経新生の上昇について、今回の実験では優位な上昇は認められませんでした。むしろ、海馬の歯状回や抑制神経細胞の性質が変化していることが見いだされました。

 

 これらの知見を総合すると、抗うつ薬の効果は、大脳皮質の神経新生、および海馬の神経細胞の性質変化に起因する可能性があります。今後、これらの細胞や現象がうつ病のターゲットとなることが考えられます。

 本研究は、藤田医科大学、京都大学との共同研究です。本研究内容は、Molecular Brain に掲載されました。

new neurons MB fig.jpg

図. 新しく産生された抑制性神経細胞

抗うつ薬を投与された個体の大脳皮質では、

産生数が有意に増加していた。

マゼンタ:細胞分裂マーカー

緑:抑制性神経細胞マーカー

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