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THE OHIRA LAB
武庫川女子大学
食物栄養学科
脳情報栄養学研究室
2019.3.28
大脳皮質抑制性神経細胞の発生機構の一部を解明
〜L1-INP細胞との関係〜
分子マーカーを用いた研究から、L1-INP(リンプ)細胞は、発生期の medial ganglionic eminence (MGE: 内側基底核隆起) 由来であることがわかっています (Ohira et al., Nat Neurosci, 2010)。これは、発生期にMGEに発したL1-INP細胞が大脳皮質まで移動し、成体になっても維持されていることを意味します。
では、どのような分子機構でMGEの細胞が皮質まで移動するのでしょうか?
この研究で我々は、マウスを用いて実験を行いました。胎生12日に、MGEに黒質由来のドーパミン線維が入力することにより、MGE細胞に対して分化と移動を促進させていることを見出しました (Ohira, BBRC, 2019)。
MGEは大脳皮質のインターニューロンの原基です。まず、ドーパミン受容体D1Rによりインターニューロンのマーカー(Dlx2, Neuropilin-1, GAD67)が発現上昇します。この中には、ドーパミン受容体D2Rも含まれます。さらに、発現したD2Rを介して、MGEから移動を促すBDNFの発現が促進されます。このBDNFはオートクラインによりTrkBを介した移動が生じさせていることがわかりました(図)。
MGEから移動する細胞の中に、将来のリンプ細胞が含まれいていることが予想されます。次の課題は、リンプが成体でどのように維持されているのか解明することです。
本研究は、Biochemial and Biophysical Research Communicationsに掲載されました。
略号•用語
GAD67: GABA合成酵素
Neuropilin-1: 大脳皮質のインターニューロンが発現する接着分子の一つ
D1R: D1型ドーパミン受容体
D2R: D2型ドーパミン受容体
BDNF: 脳由来神経栄養因子
TrkB: BDNFの特異的受容体
Substantia nigra: 黒質