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  • 執筆者の写真kohira1

研究のテーマ設定

 サイエンスには2種類あると言われる。一つは自然が対象となる自然科学。もう一つは、人や社会に役立つ応用科学。前者は、いわゆる普遍性のある原理や法則を見つけるものである。後者は、自然科学によって得られた原理や法則を利用して、人の幸福や豊かな生活の実現を目指すものとなる。

 この10年ほど、日本人研究者がノーベル賞を毎年のように受賞してきた。それらの研究者がよくいう言葉は、”科学で得られた知識は、すぐには役立つものではない”、である。ノーベル賞の対象が、純粋は自然科学を対象とすることが多いのでこの言葉がよく聞かれるが、ヒトは、その活動により色々な法則や原理を発見し、それを応用することで社会や生活を豊かに発展させてきた。あるいは、何気なく利用してきたものや事象の原理が後からわかり、さらなる発展をしたとも言える。いずれにせよ、科学の発展により、生活がより豊かになってきたことは間違いない。

 私個人としては、自然科学の分野にいることもあり、やはり根本的な原理や法則を探究する研究がしたいと思っている。一人の人の研究人生は、たかだか30年ほど。その間に、本質的なサイエンスの発展にどれだけ資することができるのか。一歩間違えると、どうでもいい枝葉の研究に迷い込んでしまう。当たり前だが、大事な研究も、本質を外したどうでもいい研究も、一度やり始めてある程度の結果を得て論文にするには、ほぼ同じくらいの時間とお金と労力が必要だ。できることならどうでもいいことはやりたくない。もちろん、自分が面白いと思えることも大切だ。面白く、かつ重要なテーマ設定、これが一番大事なことなのだ。研究者としてのセンスが問われる。センスとは、自然の法則や原理に波長を合わせて、問題点を射抜いていくことではないかと思う。先天的な脳構造と、後天的な家族や生活環境も大きく影響する。

 そろそろ、来年卒業研究を控える3年生がプレ卒論のため研究室にやってくる。テーマをどうするか、頭を悩ませる。

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