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執筆者の写真kohira1

研究の多様性と活力

更新日:2019年8月7日

 以下の引用文は、私が大学院時代を過ごした研究所の当時所長が書かれたもの。


ここから>

 「この25年間の大部分、心理研究部門は室伏の指導のもとにあった。室伏は立命館大学に移る時になって、初めて若手の助手や大学院生の教育・指導方針を語った。それは、若手の研究者が己の興味を追求するのをできる限り援助する、ということであった。浅野以下の教官や大学院生が自由に自分の道を歩むことができたことを、われわれは心に深く刻まねばならない。もし現在の心理部門の研究に見るべきものがあるとしたら、それはこのような室伏の指導方針の成果である。この方針が堅持されるかぎり、心理研究部門はその多様性と活力を失わないだろう。」


 わたしはこの先生の方針を踏襲したつもりだ。この方針の有効性は一部門だけでなく研究所全体に当てはまるだろう。50年経つと研究所は劣化すると聞いたことがある。しかし、この方針でやっていけば、若手研究者は伸び伸びと研究ができ、研究所は多様性と活力を失うことはないだろう。

<ここまで


 現在、本学で研究室を主催させていただき、毎年卒業研究生(4年)を指導している。私が卒研指導をするときの心構えは、まさに、当時の所長が書かれたことと完璧に一致している。これは直接所長に聞いて教わったわけでもないし、他も誰かに聞いたのでもない。上の文章も、所長が開設しているHPを最近見て知ったのだ。

 しかし、確実に言えることは、当時の私を含めて、研究所に所属していた大学院生の先輩後輩、同期生の誰もが、所長の方針は、言わずもがな、知っていたと思う。いや、その所長以前、研究所、あるいはそのまた上の大学ができて以来、脈々と受け継がれてきた伝統なのだと思う。

 実際に、私の当時の指導教官の指導は、学問的に本当に厳しかった。セミナーなどであまり考えずに発表すると、その場で烈火のごとく叱られた。研究テーマや実験について、先生と日々議論していたことを覚えている。当時の研究所の先生方は皆、院生に厳しかったが、それは先述のとおり、学問的な考え方やアプローチの仕方においてのみである。つまり、その考え方ややり方では、あなたの知りたいことにはたどり着けませんよ、ということを厳しく追及されたのだ。研究所に所属する全員が、「研究者が己の興味を追求する」ことに心血を注いでいたからだと思っている。もちろん、飲み会などでは本当にいろんなことをざっくばらんに話せた。それだけ、互いの信頼関係が成り立っていたからなのだと思う。

 ひるがえって、現在である。たとえ卒業研究でも、学生の自主性に任せて、テーマの選択や1年の計画も練ってもらっている。これらは偏に、「己の興味を追求する」ことにある。追求した末に得られるものがあるはずで、それは今後の人生の色々な局面において役立つと信じているからだ。

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